窪田有美子展「土耳古陶板画の世界」


「デボンの残照」

 

ひっそりと

 

ゆったりと

 

しっかりと

 

生命(いのち)を繋ぎ続けた者の

 

静かなる威光

 

 

古来より、異文化の交流によって豊かな芸術文化が育まれた数多の例を私たちは知っています。文明の十字路と呼ばれるトルコの、伝統的な装飾タイル芸術もその1つです。

ルーム・セルジューク朝、オスマン朝の時代から受け継がれてきたそれを、21世紀に生きる日本人の感性をもって描く。この小さな一個人の創作活動が、時空を超えた文化の融合という壮大な事象の断片となって何か面白いものを生み出せたら、それはもう愉しいではありませんか。

(窪田有美子)

Since ancient times, we have known of numerous examples where cross-cultural exchanges have nurtured a rich artistic culture.  One such example is the traditional decorative tile art that flourished in Turkey, known as the Crossroads of Civilisations.

The art has been handed down from the Rum Sultanate, and Ottoman dynasties. Now in the 21st century, a Japanese artist like myself is creating art works using the technique with my own sense living in the present.

Wouldn't it be wonderful if the creative activities of one small individual could produce something interesting as a fragment of the monumental fusion of cultures beyond time and space?
(Yumiko Kubota)

「デボンの残照」は、オスマン朝芸術に見られるサズ様式を基にデザインされています。シーラカンスのような肉鰭類が出現し、"魚の時代”とも言われるデボン紀は植物が陸上に進出していった時代でもあります。最古の陸上植物とされるクックソニアから始まり、アグラオフィトン、プシロフィトンへと続く初期の陸上植物たち。そして最古の木とされるアルカエオプテリスが、進化を辿るようにサズ様式のコンポジションの中にちりばめられています。

約6億年前、人類が誕生する遥か遠い昔、海の中には謎に満ちた不思議で奇妙ないきもの達の平和で穏やかな世界が存在していました。この後期エディアカラ生物群を描いた作品は、第Ⅰ期「Avalon」、第Ⅱ期「White Sea」、第Ⅲ期「Nama」という3部作になっています。エディアカラ紀の生物の多くは基本的に柔らかく、目や歯やトゲを持たず、敵から身を守るための殻などもありません。このような特徴から、彼らは本格的な生存競争が無い世界を生きていたと考えられ、この時代は"エディアカラの楽園”とも言われます。

 

「楽園の闖入者」シリーズでは、このエディアカラの楽園に想像上のおかしな生物たちが紛れ込み、古生物と空想が交錯する独自の世界が展開します。


 

 窪田有美子 Yumiko KUBOTA

 

1971年、東京生まれ。1995年に武蔵野美術大学空間演出デザイン学科を卒業後、東京の玩具メーカーに勤務。2006年にトルコタイルのデザインを学ぶ為、トルコ政府奨学金留学生として単身渡土。2010年にトルコ国立ミマル・シナン芸術大学伝統トルコ芸術学科タイル専攻修士課程を修了。イスタンブルでアトリエ・チニチニとして制作活動を続け、2019年に帰国。2021年、トルコタイル絵付け工房「アトリエ・チニチニ」を千葉県我孫子市に開設。

 

 

【受賞歴】

 

2013 伝統芸術コンペティション

Geleceğin Ustaları

タイル部門 2位入賞/トルコ

 

2014 伝統芸術コンペティション 

Geleceğin Ustaları 2」 

タイル部門 3位入賞/トルコ

 

2015 伝統芸術コンペティション

Geleceğin Ustaları 3」

タイル部門 1位入賞/トルコ

 

2015 古典芸術コンペティション

「7tepesanat

タイル部門 1位入賞/トルコ

 

2016 伝統芸術コンペティション 

Geleceğin Ustaları 4」 

タイル部門 2位入賞/トルコ

 

2018 伝統芸術コンペティション 

Geleceğin Ustaları 6」 

タイル部門 3位入賞/トルコ

 

 

【出展歴】

 

2008  

Geçmişten Günümüze Geleneksel Sanatları

ミマル・シナン芸術大学/イスタンブル

 

2010  

Çini Bahçesinde Nevbahar

ベイオール・アートギャラリー/イスタンブル

 

2015 

ERGUVAN İSTANBUL

マルマラ大学アートギャラリー/イスタンブル

巡回展:タタールスタン共和国/カザン

 

2018  

Yeditepe Bienali -KARMA ÇİNİ SERGİSİ-

ヌルオスマニエ・モスク 地下倉庫展示会場/イスタンブル

 

DÜN KÂŞİ-EVÂNİ,BUGÜN ÇİNİ SERGİSİ

メフメット・アキフ・エルソイ芸術センター/イスタンブル

 


窪田有美子展「土耳古陶板画の世界」

Yumiko KUBOTA Exhibition [The world of Turkish Tile Paintings]

2025.1.31- 2.9   Closed on Wednesday

助成 :  野村財団 

Subsidized by Nomura Foundation