古巻和芳展「Skywalker -Spirit in heaven, Soul on earth」


Skywalkerは、糸の上に佇立する木像シリーズである。

今回は、天に開いた“窓”としてのアサガオのタブローと、

地上にある白い陶片の“瓦礫”、そのはざまの宙をskywalkerが渡る。

 

-まもなく阪神・淡路大震災から30年。

(古巻和芳)

My artwork 'Skywalker' is the series of wooden figures standing on a thread.
In this exhibition, tableaux of morning glory are placed as 'windows’ to 
the heaven and white ceramic 'debris and shards' on the ground, with
Skywalker walking on the thread in the air amongst them.

  - It will soon be 30 years since the Great Hanshin-Awaji Earthquake.

  (Kazufusa KOMAKI)

 

The Glory No.112]

展は、糸の上を渡る姿の木像「Skywalker」と、アサガオのタブロー「The Glory」、そして震災瓦礫をイメージした白い陶器(セルベン)の小山、この3つの要素で構成します。

 

Skywalker」シリーズは、木像が手にした棒の両端に錘があり、糸の上でやじろべえのようにバランスを保つことができる彫刻です。左右に多少傾けても、振り子のようにゆらゆら揺れて元に戻ります。危ういバランスを保ちながらも、ピンと張った糸の上で重力から解放されたかのように中空を歩む姿から様々なイメージが羽ばたいていけばと良いと考えています。

 

また「The Glory」シリーズは、2000年代に描いていたアサガオのタブローです。アサガオは英語でmorning gloryといいます。gloryという単語には神の栄光という意味のほか、 go to glory(=天に召される)のように昇天、すなわち死のニュアンスもあります。光へと吸い込まれるような漏斗状の構造を持ったアサガオのイメージは、skywalkerがその往き先に見上げる「向こう側」の表象でもあります。

 

床に敷くセルベンは、2007年の神戸ビエンナーレにおいて、阪神・淡路大震災をテーマに制作した作品

「掃き清められた余白から」に用いたもので、ビデオテープ、食器、リコーダーなど身の周りの日常品を象って焼成しており、震災で失われた日常の瓦礫の表象です。なお、セルベンは、不良磁器を粉砕して再生し粒度調整した成形素材で、焼成することによって、再び磁器状に固まる再生素材です。

 

今回の展示会期は、ちょうど神戸の震災から30周年の節目にあたることから、Skywalkerは瓦礫の上を渡って往く人の姿、天にある光に向かって歩む姿を意識しました。もちろん、神戸の震災だけではなく、近年頻発する災害や紛争、あるいはその他様々な状況に向き合う人に重ね合わせて見ていただければよいと考えています。

 

 

 


1995年の阪神・淡路大震災を経験した神戸の詩人・安水稔和(1931 -2022)は、晩年、東日本大震災を受けて、「閖上 ゆりあげ」という詩を2018年に書いています。

今回のタイトル「Spirit in heaven, Soul on earth」はこちらの詩に想を得ています。

 

 

 

閖上 ゆりあげ

 

見渡せば

地に阿比(あび)の群れ。

ゆらり揺れ

やまず。

 

見上げれば

天に星屑。

なくなった人の目

いなくなった人の目。

 

(こん)は天に

(はく)いまも地に。

ゆらり立ち

帰れ。

 

 

 (宮城県名取市/安水稔和「地名抄」東日本 六篇より 

  2011年3月11日 東日本大震災)

 

  


古巻和芳経歴

 

1967年宝塚市で呉服屋の息子として生まれる。神戸大学経営学部卒業後、1990年代からノウゼンカヅラやアサガオの花をモチーフとしたペインティング作品を制作。2006年に越後妻有アートトリエンナーレで「繭の家-養蚕プロジェクト」への参加以降は、港都KOBE芸術祭など国内各地の地域芸術祭で土地の「記憶」をテーマにしたサイトスペシフィック作品を発表してきた。近年は、養蚕に縁が深い桑の木を素材に人物像を彫ったことがきっかけとなり、木像彫刻を手がけているほか、詩をモチーフにした言葉の作品も制作している。

 

○展覧会歴(個展)

1998 「Flowery(キリンプラザ大阪)

1999 「花の蔭から」(ギャラリー・ラ・フェニーチェ/大阪)

2002 「The Glory」(ギャラリー二葉/東京、ギャラリー・ラ・フェニーチェ/大阪)

2003 「The Glory」(ハートフィールドギャラリー/名古屋) 

2013 「絹の国の母たち」(ギャラリーあしやシューレ/兵庫)

  2017 「褜と空洞の間の庭で」(MU東心斎橋画廊/大阪)

  2019 「降り積もる、言葉が見える」(ギャラリー島田/神戸)(ギャラリー島田/神戸)

  2020 「光の手ざわり」(MU東心斎橋画廊/大阪)

  2022 「降り積もる、言葉が見える」(city gallery 2320/神戸)

2023 「糸をわたる Walk on a thread」(MU東心斎橋画廊/大阪)

2024 「Skywalker, Toward Morning Glory」(ギャラリーノマル/大阪)

 

○展覧会歴(グループ展)等

1991 吉原治良賞美術コンクール(大阪府立現代美術センター)

1993 印象神戸絵画展・優秀賞(神戸市立博物館)

1994 キリンコンポラリーアワード'94・奨励賞(キリン横浜ビアビレッジほか)

1997 兵庫の美術家(兵庫県立近代美術館)

2004 大阪アートカレイドスコープ OSAKA04(大阪府立現代美術センター)

2006 越後妻有アートトリエンナーレ(~2015)     

2007 神戸ビエンナーレ(アートインコンテナコンペティション)実行委員会特別賞

2010 西宮船坂ビエンナーレ(兵庫)2012も)

2014 震災から20年 震災・記憶・美術(BBプラザ美術館/神戸)

  2017 港都KOBE芸術祭

 

○受賞

2008 第36回ブルーメール賞 

2022 芸術文化団体半どんの会文化賞 

 

〇コレクション

神戸市立博物館、世沙弥美術館           

 

 

[skywalker No.16]


古巻和芳展「Skywalker  -Spirit in heaven, Soul on earth」

Kazufusa KOMAKI Exhibition [Skywalker  -Spirit in heaven, Soul on earth]

2025.1.12 - 1.25   

12:00 - 19:00 Lastday -17:00

水曜休廊  Closed on Wednesday