汚穢のちから
いわゆる日本画の画面は一般に清明であることが求められる。しかし、ここに居並ぶ画面は汚穢の感覚に満ちている。この感覚は、画面を染め上げる濁った色づかいから主題にまで及んでいる。
おぞましさに目を背けたくなるかもしれないが、事柄は、そう単純ではない。
たとえば 「湿潤」と称される日本列島の風土は、言葉を変えれば 「多湿」 ともいえる。 むしろ、この方がリアルであろう。しかし、日本画の世界において、日本のリアルは、あたかも汚物のように外部へと排泄されつづけてきた。そのようにして日本画の秩序は守られてきたのである。
椎名絢の画面が穢れを感じさせるのは、それが、こうした排泄の場もしくは排泄物そのものだからである。これは決して日本画の否定ということではない。汚穢は、霊的なものが悪でもあり善でもありうるように両価性をもつのである。いささか古びた比喩を用いるならば、排泄における 「負のエントロピー」 の作用によって、日本画は生命を更新しつづけてきたのだが、その排泄物は、いわば「負の日本画」として不気味な輝きを帯びるのだ。
日本画のアイデンティティの危険な拠り所、椎名絢の画面は、そこに位置を定めている。
(北澤憲昭 / 美術評論家)
熱海には、‘イメージ’の日本の歓楽街がありました。
熱海銀座商店街、ヌードスタジオ、スナック、秘宝館‥‥
街全体に広がる俗っぽさ、密やかさ。
そんな熱海の風景を描きたいと思いました。
(椎名 絢)
椎名 絢 Aya Shiina
1979 茨城県生まれ
2001 お茶の水女子大学卒業
2013 武蔵野美術大学造形学部日本画学科卒業
2015 武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻日本画コース修了
主な展示
「第9回菅楯彦大賞展」 倉吉博物館/鳥取(2016)
「庭/根 椎名絢・宮本万智」 マキイマサルファインアーツ/東京 (2015)
「a.a.t.m.アートアワードトーキョー2015」 丸ビル/東京(2015)
椎名 絢展「熱海」
Aya Shiina Exhibition [ Atami ]
2017.11.29 (Wed)-12.9 (Sat)
Open: 12:00-19:00 Closed: 火曜 / Tuesday